【ブランディング】デザインを減らす。というコンセプトについて
R.D.C.の活動理念 =「デザインを減らす」
名古屋のブランディングカンパニーR.D.C. ディレクターの大石です。「R.D.C.」という社名について、よく「何の略ですか?」と尋ねられることがあります。これは、「Reduce Design Concierge」の頭文字をとった略語で、「デザインを減らすコンシェルジュ」というのが直接的な意味になります。
コンシェルジュ – Concierge –
コンシェルジュというのは、思い描く通りホテルのコンシュルジュのような意味です。最初はコンサルティングにしようと思ったのですが、言葉のニュアンスが違うな…と思い、コンシェルジュとしました。
R.D.C.はロゴ制作や書体開発などのブランディングプロジェクトを最も得意としています。ですがもちろん名刺・パンフレット・チラシなどの紙媒体のクオリティにも自信がありますし、ウェブのデザインにおいてはコーディング・プログラミングまでを自社の中で完結させることができます。
さらに制作する媒体の種類をも徹底したヒアリングをもとに選定し、コンセプトメイキングを軸に、集客・ブランディング戦略のご提案までさせていただくことから、「どんなリクエストにもお応えできる」という意味合いで、「コンシェルジュ」としています。
デザインを減らす – Reduce Design –
コンシェルジュは、イメージしやすいと思いますが、引っかるのは「デザインを減らす」という部分でしょう。デザインオフィスなのに、「デザインを減らす」は逆行している気がしますよね?しかし、ここにこそ僕らのデザイン哲学と、理想的な世界観が埋め込まれています。
究極の「理念」とは
僕(ディレクター大石)は、この立場で仕事をすることの最大の面白さが、同年代の会社勤めの人とは比較にならないほど多くの「経営者」の方と出会い、その方の価値観を知ることができることにあると思っています。これまで、数多くのクライアントにお会いし、その方の会社やサービスの、理念・本質について語り合いながら、さまざまな成果物を作ってきました。
そんな日々の中で、特に共感させられる経営者の方々が、共通してある「理念」を持っていることに気が付きました。それは、「自分がしている仕事が無くなることを理想としている」というものです。
「自分がしている仕事は、今は無くては誰かが困るもの、しかし本質的な豊かさは、その仕事の存在さえ必要とされなくなる誰も困っていない状態」。
今、その仕事があるということは、誰かがサポートを必要とする「エコシステム」があるということ、そのエコシステムの根幹を取り除くことこそ、理想的な豊かな状態というこの考え方は、僕は「究極の理念」だと思っています。
AIはデザインができるのか?
「仕事がなくなる」というテーマにおいて、AIのことが話題になる昨今、コーディングやプログラミングは、人がやらなくてもいい仕事になっていくと思われます。では「デザイン」はどうでしょうか?野村総合研究所の共同研究では、グラフィックデザイナーは「なくならない仕事」に分類されていますが、僕が考えるに「今デザイナーと呼ばれている多くの人」は仕事がなくなると思います。
それは、単にお客さんの要求するままに、「かっこいい」や「かわいい」などの視覚を追うだけのレベルのデザインであれば、パターンの量を出すのが得意なAIの前では、人がやる必要のない作業となるからです。
対して、本当になくならないデザインの仕事の一つに、僕は「ブランディング」があると思っています。
ブランドに触れることの爽快感は、単なるビジュアルの好みだけではなく、その魂(コンセプト)や歴史、さらには経営者の哲学など、複合的なエレメントからにじみ出る「情緒」が織りなす独特な喜びです。それをプログラムがパターンの組み合わせで、作り出すことができるようになるとは、僕は思えません。
究極の「ブランディング」とは
究極のブランディングとは、「何もしていないのにブランドができあがっている状態」だと思っています。演出が一切ない生のままの良さが生きる老舗の和菓子屋などを見つけると、そこに究極のブランドを感じます。
広告という分野でデザインに触れてきたものとして、常に葛藤があります。イメージを作る仕事をしている以上、コンテンツより魅力的なブランディングはハリボテになってしまいますが、ユーザーに明確に「良さ」を伝えるためには、視覚的に得られる感覚はトリガーとして有効的です。
その絶妙なコンテンツとの駆け引きこそが、「デザインを減らす」という言葉が持つ感覚にぴったりだと思ったのです。
デザインの役割は、コンテンツの良さをそのまま伝えること
コンテンツの点数が90点であれば、いいデザインをしても90点満点しか出せません。やっぱりデザインの対象となるコンテンツの良さ以上のものは、どれだけ優秀なデザイナーでも作れません。なので、ときに僕らは「コンテンツそのもの」や、それがユーザーにもたらす体験(UX)を向上させるために、デザイン脳を使って発想したり、アドバイジングをさせていただきます。
変わっていくデザインの「役割」
それは、見方によっては一般の方が思う「デザイン」とは乖離した内容のサービスになっているかもしれませんが、「デザイン思考」というワードに需要が出てきている昨今では、求められるケースも増えてきています。
形として何かを作るわけではなくとも、デザイナーが運営チームに入ることで、ユーザー体験をデザインし、ブランドに貢献することが可能です。
そういったサービスは、現状「コンサル」でくくられることが多いのですが、デザイナーに求められる需要もこれと重なってきています。デザインと思われていないことがデザイナーに求められるようになると、「デザイン」という言葉は減っていきます。
ロゴの制作や書体開発だけでなく、サービスのネーミングから行った「pittashi」
井上雄彦のストーリーメイキング
「スラムダンク」や「バガボンド」で有名な漫画家の井上雄彦さんは、プロフェッショナル仕事の流儀に出演された際に、漫画のストーリーメイキングについて言及しています。
井上雄彦さんのストーリー作りは、物語を創造するというよりも、「キャラクラーと会話をする」ということで出来上がっていくそうです。「ストーリーに興味はない。キャラクターさえ人間が長けていれば、ドラマになる」んだそうです。設定の上に優秀なキャラクターを放り込めば、ひとりでに物語を作っていってくれる。
この感覚は、非常に「ロゴデザイン」にこだわっているブランディングカンパニーR.D.C.にも共感できるものがあります。
ロゴにこだわることは、「主人公」を作るということ
ロゴ制作というお仕事は、R.D.C.は最も時間とパワーを費やし、そして最も自信を持っている制作媒体です。その「ロゴ」は、先の井上雄彦さん流のストーリーメイキングに於ける「主人公」というキャラクラーに似ています。
じっくりクライアントと対話をする中で見えてくる理念や信念、理想や、僕らが知らなかった業界の知識、僕らが見てきた風景や物事が、情報として連鎖を起こします。そして、デザインが得意な「イメージ」を利用し、シンボルマークやロゴタイプといったコンパクトな媒体に人格を作り出すのです。
ロゴが持つ人格や性格。フォントが持つ声質やトーンは、ひとりでに名刺やチラシ、ウェブなどの媒体から媒体へと動き回り、物語を作っていくのです。それが「ブランド」です。
ブランドを作る上で無駄なデザインはしない。そのためには、「ロゴ=主人公」を作り込むことが最も合理的だと思うのです。